函館の夜景。

中学生の時に修学旅行で北海道へ行った。

 

札幌や小樽の街並みも寒い地域ならではの暖かさを感じて好きになったが、最も印象深かったのは函館の夜景だった。(ベタだけど)

 

予定では旅館で夕食を済ませたあと函館山から夜景を見ることになっており、僕は出発前に一旦部屋に戻れるだろうと思い荷物を部屋に置いてきてしまった。

これが後悔を生むことになる。

 

先生の先導で、皆が夕食を取った座敷から直で外にぞろぞろと出ていく。

今カメラを取りに戻ったら確実に置いていかれる。

とうとうカメラを取りに行くことができないままロープウェイに乗ってしまい、僕は半べそ状態だった。

 

綺麗な夜景を臨み、カメラを向けるクラスメイトたちを悔しいような寂しいような気持ちで見ていた。

涙混じりで見下ろした夜景は確かに綺麗だった。

想像よりも遥かに。

 

しかし、当時の自分の胸中では学校に帰ってからも、何ならその後修学旅行の記念アルバムに使う写真を選んでいる時も、あの綺麗な夜景を写真に残せなかった悔しさがずっと渦巻いていた。

 

あれから6年が経ち、今になって思い出すと写真になんて取らなくても良かったな、と思える自分がいることに自分でも驚いた。

 

そもそも撮った写真を見返すことなどあまりないし、必死になってカメラを覗き込むより肉眼で見ていた方がずっと良いに決まっている。

 

写真のように鮮明とは言えないが、今でもあの綺麗な夜景にため息を漏らしたことを思い出せる。

 

6年越しに自分を肯定できたのがなんだか嬉しかった。

 

花火大会に来ているのに花火を肉眼で見ない人が多いことに愕然とし、ふとそんなことを思い出した。